60代からの学び直し 後編(FP3級)

お金・老後

前回は、簿記3級を学んだときのことを書きました。

今回は、その後に取り組んだFP——ファイナンシャル・プランニング技能検定の3級について、書いてみたいと思います。

FPは金融の人のもの、という認識だった

正直なところ、FPについての認識はかなり誤解していました。

金融関係の仕事をしている人が、業務上必要だから取る資格であり、一般の人には特段必要ない。そのように思っていたのです。

学ぶ内容も、主に金融商品の知識の範囲だろうと、かなり狭い範囲で捉えていました。

しかし、簿記を学ぶきっかけになったYouTubeの動画では、FPも誰にとっても必要だと説明されていました。FPは市販のテキストと問題集の独学で十分に学べるという話でしたので、それなら、と併せて学んでみることにしたのです。

テキストを開いて驚く

実際にテキストを開いてみて、かなり驚きました。

金融資産の運用を中心としたライフプランニングだけではありません。税制、不動産、相続、保険。そのどれもが、しっかりと範囲に入っているのです。

主に金融商品の知識という私の認識は、まったく的外れでした。

考えてみれば、当然かもしれません。人が生きていくうえでお金に関わることは、そのすべてが対象になるのです。

簿記のあとにFPを選んだ理由

なぜ簿記を先に、FPを後にしたのか。

理由は二つあります。

ひとつは、簿記の方が以前から気になっていたこと。もうひとつは、簿記の方が学ぶのが大変そうだと思ったからです。大変な方を先に済ませておきたい気持ちがありました。

簿記は社会経済の土台にあたる知識。FPは、暮らしの基礎にあたる知識。そのように感じています。土台を知ってから基礎へ、という流れは、私には自然でした。

もっとも、FPの方が実務ではすぐ役立ちますし、両方学ぶかどうかも含めて、その選択は人それぞれだと思います。

語呂合わせと、本質の理解と

FPの勉強には、YouTubeの講義と、それにセットになっている市販のテキストと問題集を使いました。

講義を見ながらテキストを一通り読み、そのあと問題集を二、三回解いて覚えていく。簿記と同じく、一日一時間ほどを目安に、三か月ほどかけてゆっくり進めました。

FPには、丸暗記が必要なものも結構あります。数字や要件を覚える必要のある問題が、どうしても出てくるのです。

私は丸暗記が苦手なので、何を根拠にそういう数字や要件になったかわからないものを、ただそのまま覚えることに正直苦手意識がありました。

助かったのは、分かりやすい語呂合わせを使って覚える方法を、いくつも説明されていたことです。また、本質の部分を理解することで、丸暗記に頼らずに解ける方法もいくつか説明されていました。これらのおかげで、かなり助かりました。

法令改正という、落とし穴

もし、これからFPを学んで試験を受けられるのであれば、ひとつ、注意していただいた方がよいこととして、参考までに述べたいと思います。

FPの試験は、六月の試験問題から、法令改正後の内容が反映されます。つまり、テキストを買う時期と勉強を始める時期を、きちんと考慮して始める方が楽です。

私は、そこをよく考えず始めていました。

テキストと問題集を買ったのは昨年の暮れ。本格的に勉強を始めたのは五月になってから。そして受験したのは八月です。つまり、手元のテキストの内容と、実際の試験問題が、改正時期を挟んでしまったのです。

幸い、YouTubeで多くの方が改正内容を解説してくださっていました。それを見ながら、テキストに新しい数字などを書き込んでいくことで、なんとか対応できました。

しかし、最初から時期を計算しておけば、こういったことは避けられます。また、あまり意味のない数字を丸暗記した後で、それが改正されて覚え直さなければならない場合、そういう時に限って、古い記憶が忘れずに残っているのです。

試験は簿記と同じくCBTテストセンターで受け、こちらも幸い一度で合格することができました。改正への対応が必要なければ、直前の勉強がもう少し楽にできたな、というのが率直な気持ちです。

簿記の知識が、意外なところで

FPを学んでいると、簿記の知識と重なる場面がいくつかあったのです。 これは嬉しい驚きでした。

たとえば、ライフプランニングで使う個人のバランスシート。そして、減価償却の考え方。どちらも簿記で学んだことが、そのまま活きました。

もうひとつ気づいたのは、FPには「すでに知っている」、ということが案外多いことです。

簿記は、日常生活ではまず馴染みのない技術でした。けれどFPが扱う内容は、社会で暮らしていれば自然と耳にしてきたことも多い。項目によっては、もうよく知っている、というものも相当数ありました。

年末調整の紙を毎年書いていたけれど

FPを学んで、いちばん「知っておくべきだった」と感じたのは、税金のことでした。

勤めていた頃、所得税は職場が自動的に計算してくれていました。だから、何も考えずに過ごしてきたのです。

年末調整だけは、職場からの案内に従って自分で書いていました。

何十年も毎年繰り返していながら、本質的なところはまるで分かっていませんでした。

今回の勉強で、ようやく全体の流れを知ることができました。所得をどう算出するのか、損益通算とは何か、所得控除と税額控除はどう違うのか。そして確定申告とは、そもそも何をしているのか。

一つひとつが順番につながって、初めて「そういうことだったのか」と知ることになったのです。

自分で確定申告をすることで、控除できるものもあります。これは、社会に出たら早めに知っておくべきことではないでしょうか。

私は、六十を過ぎてようやく知りました。もっと早く知っておけばよかった、というのが正直な気持ちです。

もうひとつ、知っておきたかったこと

もう一点、「知っているかどうかで差がつく」と感じたことがあります。

資産をどう運用していくかを考えるための、計算の道具のようなものです。お金と時間の関係を数字で捉える指数という概念がある。その考え方を学べたことは、私にとって大きなことでした。

私の若い頃は、銀行の利息が五パーセントから七パーセントほどありました。預けておけば、それなりに増えていった時代です。

けれどその後、長い低金利の時代が続きました。あの数十年を、知識があるかないかで過ごすのとでは、きっと違いが出ていたのだろうと思います。

もちろん、どうするかは人それぞれです。私も、何かを勧めるつもりはまったくありません。ただ、選択肢を知ったうえで選ぶのと、知らないまま過ごすのとでは、意味が違うと感じました。

二つを終えて、見えたもの

簿記とFP。両方を学び終えて、この二つの違いが少し見えてきました。

簿記を学ぶと、企業の決算書が読めるようになります。数字から会社の状態を読み取る技術です。

FPを学ぶと、資産計画、保険、年金、税金、資産運用といった、暮らしのお金について自分で判断できるようになります。

そして、両方を知っていることには、意味があると思います。

高額な情報商材。怪しい投資の話。必要のない保険。そういったものを、自然と遠ざけられるようになるのではないでしょうか。判断する物差しが、自分の中にできるからです。

自分でライフプランを立てるということ

ライフプランニングというのはFPに相談するものだと、以前は思っていました。

専門家がいて、その人に自分の状況を話して、計画を立ててもらう。

しかし、自分がFPの知識を得てみて、それがたとえFPの入口のレベルとはいえ、考えが大きく変わりました。

自分できちんとライフプランを立てられるのなら、それが一番良いのではないかと。自分の暮らしのことは、自分がいちばんよく知っているのです。

簿記もFPも、誰にとっても役に立つ大切な知識だと思います。若い方はもちろんですが、シニアにとっても——いえ、シニアだからこそ、身を守るために大切な知識ではないでしょうか。

これからも楽しみながら学びたい

始める前は、「今更これを学ぶ必要が、どの程度あるのだろう」という気持ちが、正直なところ多少ありました。

でも、二つとも学んでみて、本当によかったと思っています。

理解力も暗記力も、若い頃と比べれば落ちているのは確かです。それでも、簿記もFPも、社会の中で実際に使われているものですから、すでに知っている知識もあります。シニアにとっては、意外に学びやすい分野なのかもしれません。

いくつになっても、新しいことを学ぶのは脳の刺激になります。

これからも学びたいことが出てきたら、楽しみながら、無理のないペースで続けていければと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。